株式会社TAGIRU代表の藤波が、AI活用の情報発信を行うYouTubeチャンネル「猿のためになる生成AI活用術」を開設しました。
中小企業の現場で生成AIをどう使うのか?弊社が自社を実験台にして試した結果を、うまくいかなかったものも含めて発信していきます。1本目の動画を公開しましたので、あわせてご覧ください。
猿のためになる生成AI活用術 | 藤波拳矢
「日本を、あなたを滾らせる。」を理念に、生成AIの活用術を猿でもわかるレベルで発信していきます。扱うのはツールの新機能紹介だけではなく、中小企業の現場で実際に使える形にするところまで。弊社が自社を実験台にして試した結果も、うまくいかなかったものを含めて出していきます。
「猿でもわかる」を掲げた理由
チャンネル名に「猿でもわかる」と付けたのには理由があります。
AIの情報は、専門家に向けたものと、宣伝を兼ねたツール紹介に偏りがちです。実際に困っているのは、専門家ではなく現場です。触ってはみたけれど、思った答えが返ってこない。そこで止まっている人に向けて話します。
なぜ、いま発信を始めるのか
1本目の動画のタイトルは「日本を滾らせるために猿でもわかる生成AI活用術を始めます」です。
少し大げさに聞こえるかもしれませんが、本気でそう考えています。
AIを道具として使いこなしている会社と、一度触って石ころだと判断して置いたままの会社。この差が、いま急速に開いています。しかも開いている理由は資本力でも人材の質でもなく、使い方を知っているかどうかだけです。つまり、知れば埋まる差です。
弊社がご支援するのは、ご縁のあった会社に限られます。
届く範囲には限りがある。だから、支援先だけに閉じている中身を外に出すことにしました。
動画とこのコラムで、うまくいったことも、うまくいかなかったことも公開していきます。それを見た会社が自力で1業務を動かせるようになれば、それが一番いい形だと思っています。
チャンネルとコラムの役割
YouTubeでは「実際どう使うのか」を中心に発信します。ツールの新機能を追いかける内容ではなく、中小企業の現場で使える形にするところまでを扱います。
このコラムでは、動画で扱った話を手順や表として残していきます。動画は雰囲気をつかむのに向いていて、文章は後から探して見返すのに向いている。役割を分けて、両方をご覧いただけるようにしていきます。
追記。ある動画で話した「AIは万能ではない」という話
ここからは、先日撮影を終えた動画で話した内容の補足です。
動画では時間の都合で結論だけになった部分を、実務で使える形まで書き足しておきます。
「AIって、何でもできるものなんじゃないんですか」
AIの会社をやっていると、これが一番よく聞かれます。答えは、はっきりノーです。
生成AIは万能薬ではなく、単なる道具です。
使い方が分からなければ石ころと変わりません。逆に、使い方さえ合っていれば、今日から仕事の時間を目に見えて削ります。「AIを試したけど大したことなかった」という感想の大半は、AIの性能ではなく、この使い方の側で起きています。
AIは万能薬ではない。道具である
生成AIには、聞けば何でも答えてくれる万能薬のようなイメージがあります。実際は違います。使い手の指示によって出てくるものが決まる、道具です。
道具である以上、当たり前のことが起きます。電動ドライバーを買っても、ビットのサイズが合っていなければネジは回りません。道具が悪いのではなく、組み合わせが合っていない。AIで起きているのは、ほとんどがこれです。
ところがAIの場合、それが分かりにくい。ネジなら回らないことが目に見えますが、AIは何を聞いても、それらしい答えを返してくるからです。間違った使い方をしても、それらしい結果が出てしまう。だから「この程度か」と判断してしまい、そこで終わります。
弊社にご相談いただく会社の多くも、一度は自分で試しています。そして「思っていたのと違った」とおっしゃる。中身をうかがうと、性能の限界にぶつかっているケースはほとんどありません。設定と頼み方で解決する話が大半です。
「AIは使えない」と感じる3つの原因
期待外れに終わるパターンは、だいたい次の3つに分かれます。
01 モデルの選択がずれている
ChatGPT、Gemini、Claude、Copilot。名前が並ぶだけでも迷いますが、実はそれぞれの中にも複数のモデルがあります。同じサービスでも、選ぶモデルで答えの質がはっきり変わります。
速さを優先した軽いモデルと、じっくり考える重いモデルでは、得意な仕事が違います。込み入った資料の要約や、筋道を立てて考える作業を軽いモデルに投げれば、浅い答えが返ってきます。それを見て「AIはこの程度」と判断してしまうのが、一番もったいないパターンです。
どのサービスを会社の標準にするかは、社内の環境との相性で決めるのが基本です。考え方は最新AIの比較記事に早見表でまとめています。
02 設定を見ないまま使っている
2つ目は設定です。多くの人は、画面を開いてそのまま質問を打ち込みます。しかし今のAIには、あらかじめ前提を持たせておく機能があります。会社名、業種、社内で使う言葉、文章のトーン、出力してほしい形式。
ここを空欄のまま使うと、毎回ゼロから説明することになります。前提を知らない相手に毎回一から説明していれば、答えが浅くなるのは当然です。人間の新入社員に置き換えれば分かりやすいと思います。何も教えずに「いい感じにやっておいて」と頼んで、期待どおりのものが出てくるはずがありません。
設定を一度入れておくだけで、同じ質問でも返ってくる中身が変わります。ここは最も費用対効果が高い場所です。
03 頼み方が曖昧なまま投げている
3つ目が頼み方です。「この文章をいい感じにして」と投げれば、いい感じの何かが返ってきます。誰に向けて、何の目的で、どのくらいの長さで、どんな形式で。これを書かなければ、AIは推測で埋めるしかありません。
実際に指示の形を変えるだけで、結果はここまで変わります。
NG「見積書の説明文を書いて」 OK「取引先の総務担当者に送る見積書の添え状を書いてください。 ・相手は当社と初めての取引 ・金額の内訳に3項目あり、そのうち1項目は追加対応 ・お礼と、追加対応の理由の説明を含める ・400字程度、丁寧語、締めは次回打合せの依頼 まず構成案だけを出してください。」
長く書けばよいという話ではありません。相手・目的・条件・形式の4つが入っているかどうかです。最後の「まず構成案だけを出してください」も重要で、いきなり完成品を作らせず、途中で方向を確認するとやり直しが減ります。
プロンプト集を覚えても解決しない理由
「使えるプロンプト100選」のような一覧が出回っています。
ああいうものを覚えれば使えるようになるのか、とよく聞かれます。
入口としては悪くありません。ただ、それだけでは止まります。理由は単純で、あの一覧はどこかの誰かの仕事に合わせて作られたものだからです。自分の会社の業務に、そのまま当てはまることはまずありません。
覚えるべきは文言ではなく、組み立て方です。相手・目的・条件・形式を書く。一度で完成させず、途中で確認する。出てきたものが違えば、どこがどう違うかを言葉にして返す。この3つができれば、一覧に載っていない仕事にも自分で対応できます。
もう1つ、実務で効くコツがあります。うまくいった頼み方を、その場で保存しておくことです。自分の業務に合った一覧を、自分で育てていく。これが結局、他人の100選より役に立ちます。個人の頭の中だけに貯めると退職とともに消えるため、会社としては共有フォルダに貯める形にしてください。
思った答えが返ってこないときの立て直し方
実際に使っていると、狙いから外れた答えが返ってくる場面は必ずあります。ここで多くの人が、質問文を書き直して最初からやり直します。時間がかかるうえ、また外れます。
外れたときは、次の順番で立て直してください。
1手目 どこが違うかを言葉にして返す 「長すぎます。300字に。前半の背景説明は不要です」 2手目 良い例を1つ見せる 「この形に揃えてください」と、過去の完成物を貼る 3手目 それでも外れたら、モデルか設定を疑う 軽いモデルを使っていないか、前提を入れているかを確認
要点は1手目です。やり直させるのではなく、直させる。AIは直前のやり取りを覚えているので、差分だけ伝えれば済みます。ゼロから書き直すより速く、狙いに近づきます。
2手目の「良い例を見せる」は、文章の仕事で特に効きます。言葉で説明するより、過去に社内で通った資料を1つ貼る方が早く伝わります。人に仕事を教えるときと同じです。
3手目まで来ても改善しないなら、その業務は今のAIに向いていない可能性があります。粘らずに切り分けてください。向いていない業務を見極めるのも、使い方のうちです。
道具として使えるようにする4つの手順
では何から手を付けるか。弊社がご支援に入るときも、ほぼこの順番です。
01 業務を1つに絞る
全社で使いましょう、から始めると必ず失敗します。まず1業務に絞ってください。選ぶ基準は、毎週必ず発生して、文章か数字の整理が中心で、失敗しても取り返しがつくもの。報告書の下書き、問い合わせメールの返信案、議事録の整理あたりが定番です。
02 判断の材料をAIに渡す
その業務で、担当者が何を見て判断しているかを書き出します。社内用語、よく使う言い回し、絶対に外せない項目。これを設定に入れます。ここを飛ばすと、01で絞った意味がなくなります。
03 出力の型を固定する
毎回違う形で出てくると、結局は人が整えることになり、時間が減りません。項目名と並び順を決め、その型で出させます。型が決まれば、確認する側も見る場所が固定されるので、チェックが一気に速くなります。
04 確認する人を決める
AIはもっともらしい誤りを作ります。社外に出るものは、誰が確認してから出すのかを先に決めてください。ここを決めておけば、安心して現場に任せられます。
この4つは、どれも道具の側ではなく、使う側の設計です。AI導入がうまくいく会社といかない会社の差は、ツール選びではなくここに出ます。
実際に道具になった例
弊社が実際に手を動かした事例で言うと、書類作成の支援があります。児童発達支援の事業所様向けに、記録から書類を作る部分をAIで組み込む仕組みを作りました。もともと使っている業務システムはそのまま残し、そこで埋まらない手書きの部分だけを対象にしています。
結果として、書類作成にかかる時間を約80%削減、1件あたり60分かかっていた作業が30分を切る水準になりました。特別なことをしたわけではありません。業務を1つに絞り、判断材料を渡し、出力の型を固定し、確認者を決めた。先ほどの4つをそのままやっただけです。
逆に、うまくいかなかったものも書いておきます。判断そのものをAIに任せようとしたときです。価格を決める、人を採るかどうかを決める、契約の可否を決める。ここは今のAIに向いていません。材料を整えるところまでがAI、決めるのは人。この線を引いておくと、導入は驚くほど素直に進みます。
自社で試すか、まとめて相談するか
ここまでの内容は、自社だけでも進められます。無料版で1業務から試し、設定を入れ、型を決める。それで足りるなら、それが一番です。
時間が取れない、どの業務から手を付けるべきか分からない、という場合はご相談ください。弊社では業務への組み込み構築(初期330,000円税込から)、ルール作りや社員教育を含むAI研修(個別見積り)、導入後の継続改善(月額顧問プラン33,000円税込から)を行っています。詳しくはTAGIRU AIのサービスページをご覧ください。
入口としては無料のAI業務診断(オンライン30分)をご用意しています。今の業務のうち、どこがAI向きでどこが向いていないかの仕分けをお渡しします。その場で発注を決めていただく必要はありません。
まとめ。石ころにするか、道具にするか
生成AIは万能ではありません。使い方が分からなければ石ころ同然で、合っていれば今日から時間を削る道具になります。「使えなかった」と感じたら、AIの限界ではなく、モデル・設定・頼み方の3つを疑ってみてください。
そして、業務を1つに絞り、判断材料を渡し、出力の型を固め、確認者を決める。この4つで、AIは会社の道具になります。決めるのは人、材料を整えるのがAI。この線引きだけ守れば、大きく外すことはありません。
