「AIを入れたい。補助金は使えますか」。東京の事業者からよくいただく質問です。
先に数字を出します。弊社が運営する補助金の検索サイトで数えると、東京都の中小企業がいま申請できる制度は300件を超えます(2026年8月31日時点で310件。東京都対象173件+全国対象137件)。この検索サイトは毎日更新しているため件数は日々動きますが、規模感は変わりません。ただし、そのうちAI導入に使えるものはごく一部です。
そしてもう1つ、先に知っておいた方がよいことがあります。補助金の種類によっては、御社に合わせて作るシステムが対象外になります。ここを知らずに進めて、申請の直前で気づく方が少なくありません。
この記事では、東京の事業者がこの数からどう絞り込むか、国の制度と東京都の制度の違い、対象外になる落とし穴、そして探し方の手順を、実際の数字で整理します。
なお制度の内容と締切は変わります。この記事は四半期ごとに更新していますが、申請の前には必ず公式の募集要項を確認してください。金額や要件を断定する書き方は避けています。
東京都で使える補助金は300件超。でもAI向けは一部
まず全体像です。弊社の検索サイト「みつかる補助金」で、東京都の事業者が対象になる募集中の制度を数えた結果です。

| 区分 | 件数(2026年8月31日時点) |
|---|---|
| 東京都が対象の制度 | 173件 |
| 全国対象で東京の事業者も使える制度 | 137件 |
| 合計 | 310件 |
カテゴリ別に見ると、こうなります。
| カテゴリ | 件数 | AI導入との関係 |
|---|---|---|
| 設備投資・省力化 | 403件 | 省力化の文脈でAIが対象になることがある |
| 雇用・人材 | 238件 | AI研修が対象になる場合がある |
| IT・デジタル化 | 110件 | 本命。ただし後述の制約あり |
| 省エネ・環境 | 112件 | 基本的に対象外 |
| 販路開拓・PR | 76件 | AI集客が対象になる場合がある |
| 創業・起業 | 58件 | 創業時の設備としてなら可能性あり |
| 研究開発 | 42件 | 技術開発型のAIなら該当することがある |
| 観光・イベント | 15件 | 基本的に対象外 |
カテゴリは重複してカウントされるので、合計は全体の件数を超えます。見るべきはIT・デジタル化の110件と、設備投資・省力化の403件の一部です。ここまで絞れば、現実的に検討できる数になります。
ちなみに、締切が30日以内に迫っているものはIT・デジタル化だけで18件ありました。制度は常に入れ替わっています。この記事の数字も、読んでいる時点では変わっているとお考えください。
先に知るべき落とし穴。作るシステムは対象外になりやすい
ここが一番大事なので、制度の一覧より先に書きます。
AI導入の補助金として最も名前が挙がるのが、国のデジタル化・AI導入補助金(旧IT導入補助金)です。ところがこの制度には条件があります。あらかじめ登録されたITツールを導入する場合に限られるのです。
対象になる:登録された事業者が提供する、登録済みのITツール(会計ソフト、勤怠管理、既製の業務システムなど)
対象にならない:御社の業務に合わせてゼロから作るシステム(オーダーメイド開発)
つまり、「うちの業務に合わせて作りたい」という相談ほど、この制度から外れます。既製品で足りるならこの制度が使えて、既製品では足りないから作りたい会社は使えない。ここが分かりにくいところです。
ではオーダーメイド開発に道がないのかというと、そうではありません。別の系統の制度を見ます。詳しくは補助金でシステム開発・AI導入をする方法に、使える制度の3系統と対象外になる費目をまとめました。この記事では東京の事業者が実際に何を見るかに絞ります。
東京の事業者が見るべき2つの系統
300件超を眺める必要はありません。国の制度と、東京都独自の制度の2系統だけ見てください。

系統1 国の制度(全国どこでも使える)
| 制度 | 性格 | 作るシステムは対象か |
|---|---|---|
| デジタル化・AI導入補助金(旧IT導入補助金) | 登録済みのITツールの導入費を補助。通常枠のほか、インボイス枠・セキュリティ対策推進枠・複数者連携枠がある | 対象外(登録ツール限定) |
| ものづくり補助金 | 革新的な製品・サービスや生産プロセスの改善が対象 | 対象になりうる |
| 中小企業省力化投資補助金 | 人手不足の解消につながる省力化投資が対象。一般型はオーダーメイドも視野に入る | 対象になりうる |
1行目が最も有名で、最も誤解されています。名前に「AI導入」と入っているので何でも使えそうに見えますが、登録ツール限定です。枠が複数あるので、自社がどれに当たるかは公式サイトで確認してください。
系統2 東京都独自の制度
東京の事業者が見落としがちなのがこちらです。国の制度で対象外だったものが、都の制度なら入ることがあります。
| 制度 | 内容 | 規模の目安 |
|---|---|---|
| DX推進トータルサポート事業 | 令和8年度からの新規事業。アドバイザーによるDX戦略・AI活用計画の策定支援と、デジタル技術の導入費の助成を組み合わせた総合支援 | コースにより上限が大きく異なる。詳細は公社の募集要項で要確認 |
| TOKYO戦略的イノベーション促進事業 | 技術開発を伴う取り組みが対象 | 上限8,000万円 |
| 東京都商店街デジタル化推進事業費補助金 | 商店街のデジタル化が対象 | 上限1,500万円 |
| 各区の制度 | 区が独自に実施。江戸川区のデジタル技術促進補助金など | 区により大きく異なる |
1行目のDX推進トータルサポート事業は、令和8年度から新しく始まった制度です。アドバイザーの支援と導入費の助成がセットになっている点が特徴で、「何をすればいいか分からない」段階から使える設計になっています。ただし募集期間が限られるため、時期を逃さないよう公社の案内を確認してください。
そして最終行が見落としの多いところです。区の制度は、都の制度とは別に用意されています。事業所のある区の産業振興課のページを一度見ておいてください。件数は少ないですが、競争率が低い分だけ通りやすい傾向があります。
探し方の手順。5ステップで絞り込む
300件超から自社の候補にたどり着く順番です。この順でやると迷いません。
| 順番 | やること | ここで決まること |
|---|---|---|
| 01 | 作りたいものが「既製品で足りる」か「作らないと無理」かを決める | 見る制度の系統が決まる。ここを飛ばすと全部見ることになる |
| 02 | 金額の規模を決める(数十万か、数百万か、それ以上か) | 制度の上限で足切りできる |
| 03 | 国の制度を見る | デジタル化・AI導入補助金/ものづくり/省力化投資のどれに当たるか |
| 04 | 東京都と区の制度を見る | 国で対象外でも、都や区で入ることがある |
| 05 | 締切から逆算して、間に合うものだけ残す | 準備期間を確保できるものに絞れる |
01が一番重要です。ここが決まっていないと、使えない制度の要項を延々と読むことになります。既製の会計ソフトや勤怠管理を入れたいなら国のデジタル化・AI導入補助金、自社の業務に合わせて作りたいなら別系統、という分岐です。
05もよく抜けます。補助金は申請書の作成に時間がかかるうえ、多くの制度で交付決定の前に発注すると対象外になります。締切の1か月前に気づいても間に合わないことがあります。
東京都の制度を締切つきで一覧したい場合は、弊社が運営するみつかる補助金の東京都ページで絞り込めます。締切日と上限額つきで並んでいるので、05の作業がそのままできます。
補助金ありきで計画を立てない
ここは実装を請ける側として、はっきり書いておきます。
どの制度も、申請すれば必ず採択されるものではありません。受給を保証できるものでもありません。補助金が前提の計画を立てると、不採択になったときに計画ごと止まります。
おすすめする順番は決まっています。
1. 自費でも回る計画をまず作る
2. 制度が使えれば、前倒しや規模の上乗せに充てる
3. 不採択でも、規模を小さくして進められる形にしておく
もう1つ、費用の目安も書いておきます。弊社の場合、業務に合わせたシステムの構築は初期330,000円(税込)からです。この規模なら、補助金が取れなくても判断できる会社は多いはずです。補助金を待って1年止まるより、小さく始めて動かす方が結果的に速いことがよくあります。
費用の考え方はAI開発を中小企業が依頼する前にに詳しく書きました。
よくある失敗3つ
01 交付決定の前に発注してしまう
最も多く、最ももったいない失敗です。多くの制度で、交付決定より前に契約や発注をすると対象外になります。「採択されそうだから先に進めよう」が命取りです。
開発会社に相談すること自体は問題ありませんが、契約と着手のタイミングは必ず制度の要項に合わせてください。
02 対象にならない費目を計画に入れる
制度によって、対象外の費目があります。要件定義だけの費用、汎用のパソコン、月額のサーバー代などは対象外になることが多い項目です。
見積書を作る段階で、対象になる費目とならない費目を分けておくと、後の手戻りがありません。開発会社に「この制度に出すので、対象費目が分かる形で見積もってほしい」と伝えてください。
03 使い道が決まる前に申請を目指す
「補助金があるから何かやろう」という順番だと、申請書が書けません。審査ではなぜそれが必要か、導入して何がどう変わるかを説明します。使い道が曖昧なままでは、そこが埋まりません。
先に業務の課題を1つに絞って、どの作業が何分減るかまで詰めてください。その数字がそのまま申請書の材料になります。
まとめ。300件超を見る必要はない
東京都の事業者が申請できる制度は300件を超えますが、全部を見る必要はありません。既製品で足りるか、作らないと無理かを先に決めれば、見る制度は数件に絞れます。
国のデジタル化・AI導入補助金は名前に反して登録済みのITツール限定です。御社に合わせて作るシステムは対象外になります。その場合はものづくり補助金や省力化投資補助金、そして東京都独自のDX推進トータルサポート事業や区の制度を見てください。
そして、補助金ありきで計画を立てないでください。自費でも回る計画を先に作り、制度が使えたら前倒しに充てる。この順番なら、不採択でも止まりません。
自社の業務にそもそもシステムが要るのか、既製品で足りるのか。そこから整理したい場合は、無料のAI業務診断(オンライン30分)でお手伝いします。診断の結果、開発が不要という結論になることもあります。
