「御社のこと、ChatGPTに聞いてから来ました」
先日の商談で、お客さんにこう言われました。資料より先に、AIに聞く。調べる場所が、検索エンジンからAIに移り始めています。
それで僕も、自分の会社を聞いてみたんです。「株式会社TAGIRUはどんな会社?」と。
結果は、ほぼ白紙でした。
うちはちょうどドメインを移転したばかりで、AIが読める材料がサイトにほとんど無かった。人間が見ればきれいなサイトでも、AIから見れば「何者か分からない会社」だったわけです。
悔しかったので、2日かけてサイトを「AIに読める形」に作り替えました。この記事はその全記録です。何をやったか、実物付きで全部公開します。
先に正直に言っておきます。効果が出るかどうかは、これから数週間の検証待ちです。AI各社は「何を読んで回答を作るか」を公表していないので、断定はしません。その代わり、うちのサイトで起きたことを経過ごと、このコラムとYouTubeで公開していきます。一般論だけの記事なら他にいくらでもあるので、うちは実験台になります。
AIは「検索」ではなく「作文」をしている
手順の前に、1分だけ仕組みの話をさせてください。ここが腹落ちすると、やるべきことが全部つながります。
Googleはリンクの一覧を返します。ChatGPTやPerplexity、GoogleのAI Overviewsは、答えの文章を組み立てて返します。
作文の材料にされるのは、機械が誤解なく読み取れる情報です。写真が美しいサイトか、デザインが今風か、そういう話ではありません。「会社名・住所・やっていること・価格が、機械向けの書き方で置いてあるか」の話です。
つまりAI対策(AIO対策、LLMO対策とも呼ばれます)の正体は、かっこいいサイトを作ることではなく、情報の書き方を変えることです。だから制作会社に頼まなくても、やれることがかなりあります。
作り替える前の、うちのサイト
まず現状を数えたら、こうでした。
・ドメイン移転直後で、AIから見た実績はほぼゼロ
・会社の住所・価格・サービス内容の機械可読な情報、ゼロ
・よくある質問(FAQ)、ゼロ
・ページによって新旧の価格が混在(これが一番まずい)
この状態でAIに「TAGIRUってどう?」と聞かれても、AIには答える材料がありません。出てこないのは、AIが意地悪をしているのではなく、こちらが渡していないだけでした。
やったこと5つ(実物付き)
ここから本題です。うちが2日でやったことは5つ。順番もこの通りにやるのがおすすめです。

手順1 まず、AIに自社を聞いて現在地を知る
最初にやるのはサイトいじりではなく、健康診断です。ChatGPTでもPerplexityでもいいので、この3つを聞いてみてください。
・「株式会社◯◯(自社名)はどんな会社ですか」
・「◯◯(地域名)で△△(自社の事業)を頼める会社を教えてください」
・「△△の費用相場はいくらですか」
返ってくるのは、だいたい3パターンです。出てこない。間違った情報が出る。競合だけが出る。どれであっても、それが今日の現在地です。うちは1問目がほぼ白紙、2問目は競合だけ、でした。
ここで気づいてほしいことがあります。AIへの質問は、検索窓に打つキーワードと形が違います。
検索なら「新宿 AI開発」と単語で打ちます。AIには「新宿でAIのシステム開発を頼める、中小企業向けの会社を教えて」と文章で聞きます。しかも「費用はいくらくらい?」「他と比べてどう?」と会話で深掘りされる。
つまりAIの世界では、単語ではなく質問に答えられる会社が選ばれます。会社側が用意すべきなのはキーワードの羅列ではなく、質問への答えです。これが、後で出てくるFAQが効く理由の正体です。

手順2 会社の基本情報を「機械向けの名刺」で宣言する
人間向けの文章とは別に、機械向けの名刺をページの中に埋め込みます。専門用語では構造化データ(JSON-LD)と呼びますが、名前は覚えなくていいです。中身はこういうものです。
"name": "株式会社TAGIRU",
"addressRegion": "東京都",
"addressLocality": "新宿区",
"serviceType": "AI業務効率化",
"price": "33000"
会社名、住所、何をやっている会社か、いくらからか。人間のお客さんに渡す名刺と同じ情報を、機械が読める書式でも置いておく。それだけのことです。
うちが実際に入れた項目は、この5種類です。
・会社情報(社名・住所・専門分野・連絡先)
・サービス4種(業務効率化・AI業務診断・システム開発・AI集客)
・価格(月額33,000円〜、初期330,000円〜、診断は無料)
・よくある質問(後述のFAQと同じ内容)
・ページの階層(パンくず)
入れたら、正しく機械に読めているかを無料で確認できます。Googleの「リッチリザルトテスト」というページに自社のURLを入れるだけです。うちも入れるたびにここで検証しました。エラーが出たら直す、の繰り返しで大丈夫です。
ここは唯一、少しだけ技術の知識が要る工程です。WordPressならカスタムHTMLブロックに貼るだけなので、社内に分かる人がいなければ、この部分だけ外注してもいいと思います。
手順3 FAQを25問作った。コツは「質問文」と「数字」
5つの中で、一番効くと踏んでいるのがこれです。
理由は単純で、AIが受け取っているのは質問だからです。「費用はいくらかかりますか?」という質問文と、その答えがセットで置いてあるページは、AIにとって一番使いやすい材料になります。
うちはトップページに12問、サービスページに13問、計25問置きました。内訳はこういうバランスです。
| 種類 | 例 | 狙い |
|---|---|---|
| 定義系 | 「AI業務効率化とは何ができる?」 | まだ何も知らない人の入口 |
| 価格系 | 「費用はいくらかかる?」 | AIに相場を聞く人への回答材料 |
| 不安系 | 「知識がなくても大丈夫?」「機密情報は安全?」 | 発注前の心理的な壁を潰す |
| ネガティブ系 | 「向いていないケースは?」 | 信頼と、比較質問への露出 |
質問はゼロから考える必要はありません。商談で聞かれたこと、問い合わせメールに書いてあったこと、電話でよく受ける質問。その記録がそのままFAQの原稿です。うちも25問のほとんどは、実際に聞かれたことから書きました。
作るときのコツは3つです。
1つ目。実際にお客さんから聞かれた質問から書く。頭で考えたFAQより、商談で出た質問のほうが、みんながAIに聞く質問と一致します。
2つ目。回答に数字を入れる。「柔軟に対応します」ではなく「月額33,000円から」「オンライン30分」「導入実績50社以上」。数字のない回答は、AIにとって引用する価値がありません。
3つ目。都合の悪い質問も入れる。うちのFAQにはこういう質問があります。
Q. 逆に、向いていないケースはありますか?
A. 自動化したい業務がまだ言語化されていない段階では、成果が出るまでに時間がかかります。業務量が少なく手作業で完結している場合は、費用対効果が合わないこともあります。
いいことしか書いていない会社と、限界も書いてある会社。あなたがAIなら、どちらを引用しますか。それに、この手の質問は「◯◯ デメリット」「◯◯ 向いていない」という検索の受け皿にもなります。

手順4 llms.txtを置いた(実物、見られます)
llms.txtは、AI向けの会社案内ファイルです。サイトの一番上の階層に、会社の概要・サービス・料金・主要ページを1枚のテキストにまとめて置きます。
うちの実物はこれです。誰でも見られます。
正直な注釈を付けます。llms.txtは2024年に提案されたばかりの新しい仕様で、AI各社が「これを読む」と明言しているわけではありません。効果は未知数です。ただ、書くのも置くのも30分で終わります。当たれば大きい宝くじではなく、掛け金がほぼゼロの保険だと思って置きました。
手順5 矛盾を消して回る(地味だけど、たぶん一番大事)
作業の最後に、サイト中の情報の食い違いを潰しました。うちの場合、料金改定前の古い価格が、サイトのあちこちに11箇所も残っていました。
内訳を正直に書くと、トップページのFAQに3箇所、機械向けの名刺(構造化データ)の中に5箇所、AI向け案内ファイルに3箇所。つまり、この記事で「やった」と書いた施策の中にすら、古い価格が紛れ込んでいたんです。料金を改定した週にサイトを直したつもりで、直しきれていなかった。
笑えないのは、AI対策のためにわざわざ置いた情報ほど、AIが読みに来るという点です。せっかく置いた名刺に古い価格が書いてあったら、間違いを配って歩いているのと同じになります。
人間は読み流してくれます。でもAIは複数のページを突き合わせて答えを作るので、ページごとに価格が違う会社は「情報源として信用できない」扱いになり得ます。嘘をつくつもりがなくても、更新漏れが嘘と同じ扱いを受ける。ここが人間相手との一番の違いです。
チェックする項目は4つだけです。価格。住所。サービス名。旧ドメインや旧社名の残骸。半日あれば一周できます。
かかった時間とお金
うちの実績は、2日と0円です。社長の僕とAIでやったので外注費なし。自分でやる場合の目安も置いておきます。
| 工程 | 目安時間 | 難易度 |
|---|---|---|
| 手順1 現在地の確認 | 10分 | 誰でも |
| 手順2 構造化データ | 半日〜1日 | やや技術寄り |
| 手順3 FAQ 20問前後 | 1日 | 誰でも(一番効く) |
| 手順4 llms.txt | 30分 | 誰でも |
| 手順5 矛盾の掃除 | 半日 | 誰でも(一番忘れられる) |
予算を1円もかけずに、手順1・3・4・5はできます。手順2だけは詰まったら人に頼む、で十分です。
やりがちな失敗3つ
調べながら気づいた、先回りしておきたい失敗です。
1つ目。翌日に効果を求めること。AIが情報を読み直すサイクルは数週間単位です。うちも今は種を撒いた直後で、収穫はこれからです。焦って毎日聞いても変わりません。月1回、同じ質問で定点観測するのが正解です。
2つ目。盛った数字を書くこと。AIは他の情報源とも突き合わせます。実績を盛るくらいなら、小さい実数を書くほうが強い。「導入50社以上」は、実際に50社あるから書けるのであって、逆はバレる前提で考えるべきです。
3つ目。FAQをAIに量産させて、そのまま貼ること。どの会社にも当てはまる一般論の回答は、AIにとって引用する理由がありません。自社の数字と自社の事情が入った回答だけが材料になります。AIに下書きは任せても、数字と実例は自分の会社のものを入れる。ここは省略できません。
うまい会社は、もう静かにやっている
この作業を始める前に、同業や他業界のサイトをかなり見ました。気づいたのは、伸びている会社ほど、見えないところが作り込まれていることです。
ある営業支援系の会社は、FAQを10問、全部に具体的な数字を入れて機械向けの書式で仕込んでいました。「成果の目安は?」に対して獲得単価の実額で答え、「向いていない業種は?」まで正直に書いてある。表向きは普通のサイトです。ソースを開かないと分かりません。
逆に言えば、表からは差が見えないからこそ、まだ気づいていない会社が大半なわけです。地域名と業種で聞いて、AIが答えに詰まるうちが仕込みどきです。
効果はいつ、どう確かめるか
うちの検証計画はこうです。
・月1回、手順1の3つの質問をChatGPTとPerplexityに投げて、回答を記録する
・Googleのリッチリザルトテストで、構造化データが認識されているか確認する
・Search Consoleで、質問形のキーワード(「◯◯とは」「◯◯ 費用」)の表示回数を追う
記録はスプレッドシートに1行ずつで十分です。うちはこの4列で付けています。
| 日付 | 聞いた質問 | AIの回答(要旨) | 前回からの変化 |
|---|---|---|---|
| 8/8 | 株式会社TAGIRUはどんな会社? | ほぼ情報なし | 初回(実装直後) |
1行目に「情報なし」と書ける会社は、実は幸運です。変化がそのまま成果として見えるので。
結果は包み隠さず、このコラムとYouTubeで公開していきます。うまくいけば手順ごと真似してもらえばいいし、外したら外したで、それも中小企業の実験データとして価値があるはずです。
まとめ。特別な会社が選ばれるのではない
2日やってみて、確信に近づいたことが1つあります。
AIに紹介される会社は、有名な会社でも、大きな会社でもない。「AIが読める形で情報を置いた会社」です。そして今はまだ、それをやっている中小企業がほとんどいません。先にやった者勝ちの時期が、しばらく続きます。たぶん、長くは続きませんが。
もう1つ。これは一度やって終わりの施策ではありません。価格が変われば名刺も直す。サービスが増えればFAQも増やす。情報は放っておくと古び、古びた情報は矛盾になり、矛盾は信用を削ります。うちも月1回の定点観測とセットで、情報の棚卸しを回し続けます。
今日、10分だけ動くなら、やることは2つです。ChatGPTに御社の名前を聞くこと。そして返ってきた画面を保存しておくこと。数ヶ月後、その画面が一番の比較資料になります。
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