「AIで業務システムが作れる」。この1年で一気に言われるようになりました。ただ、経営者の立場では判断できません。どこまで作れて、どこからは人がやるのかが書かれていないからです。
そこで、自社で作ってみた結果をそのまま公開します。弊社が運営している補助金の検索サイト「みつかる補助金」です。AIに書かせたコードで動いていて、いま実際に検索から人が来ています。
先に結論です。作れます。ただしAIが速いのは「作る」工程だけで、そこは全体の一部でした。何を作るか決める、データの出どころを探す、動くか目で確かめる。この3つは人がやるしかありませんでした。
この記事では、実際の数字を全部出します。コードの行数、生成したページ数、検証に使った枚数、公開してからの検索の実績まで。そのうえで、御社でも同じことができるかを判断できる形にします。
何を作ったのか。実データを全部出します
まず作ったものです。全国の補助金・助成金を、地域や従業員規模や目的から探せる検索サイトです。募集中の制度を毎日取り直して、締切が近いものにバッジを出しています。

| 項目 | 実測値 | 補足 |
|---|---|---|
| 書いたコードの量 | 5,998行 | ほぼ全てAIが書いた。人が書いたのは設定ファイル程度 |
| 扱っている補助金 | 307件 | デジタル庁のjGrants公開APIから取得。利用は無料 |
| できたページ数 | 1,258ページ | 都道府県・市区町村・カテゴリの組み合わせで自動生成 |
| 動作確認の画面キャプチャ | 114枚 | ここは人の目で見るしかなかった。後述 |
| 公開してからの検索表示 | 直近28日で約7,900回 | 2026年9月7日時点。Search Consoleの実測 |
| 検索で拾われている語 | 840語 | 同上 |
この数字は自慢のために出しているのではありません。「AIで作れる」と言うとき、どのくらいの規模を指しているのかを示すためです。5,998行というのは、人が手で書けば数か月かかる量です。それが実際に動いていて、検索から人が来ています。
使っている道具も書いておきます。Claude Code(AIにコードを書かせる道具)と、Next.js(サイトを作る仕組み)です。データはデジタル庁が公開しているjGrantsという補助金の情報源から取っています。このデータは無料で、申し込みも要りません。
AIが速かった工程と、遅かった工程
ここが一番知りたいところだと思います。作業を工程ごとに分けて、AIがどれだけ効いたかを正直に書きます。
| 工程 | AIの効き方 | 実際どうだったか |
|---|---|---|
| 画面を作る | 非常に速い | 「補助金の一覧を出して、締切が近い順に並べて」で動くものが出てくる。ここは劇的に速い |
| 同じ形のページを大量に作る | 非常に速い | 1,258ページが一気にできる。人手なら現実的でない量 |
| 見た目を整える | 速い | 色やレイアウトの指示は通る。ただし「なんかダサい」は伝わらないので、参考にするサイトを見せる必要がある |
| データの取り込み | 普通 | 取り方は書けるが、どのデータを取るかは人が決める |
| 動くかどうかの確認 | 効かない | AIは「できました」と言う。実際は崩れている。目で見るしかない |
| 何を作るかを決める | 効かない | ここが本体。後述 |
表の下2行が重要です。AIは「作る」のは速いのですが、「合っているか」は判断できません。できたと言ってきた画面が、スマートフォンで見ると文字が重なっている。そういうことが普通に起きます。
だから確認用のキャプチャが114枚たまりました。画面を撮って、目で見て、直す。この往復が作業時間の大半でした。
人がやるしかなかった4つ
ここを外注に丸投げできると思っていると、うまくいきません。AIを使っても人に残る仕事です。
01 何を作るかを決める
これが一番重い工程でした。補助金のサイトは既に何社もあります。同じものを作っても意味がない。
弊社が決めたのは「この補助金で何が作れるか」が分かる形にすることでした。制度を並べるだけのサイトは既にあるので、開発会社が運営している強みを出す。この判断はAIには出せません。自社が何屋で、誰に来てほしいかを知っているのは人だけだからです。
02 データの出どころを見つける
補助金の情報をどこから取るか。ここも人が探しました。結果として使ったのは、デジタル庁が公開しているjGrantsという情報源です。無料で、申し込みも要りません。
ただし癖がありました。キーワードを指定しないと結果が返ってこない仕組みだったので、そのままでは全件が取れません。20個のキーワードで順番に検索して、重複を取り除いて1つにまとめる、という回り道をしています。
この「思ったとおりに取れないので、回り道を考える」ところは人の仕事でした。業務システムを作るとき、データの出どころで詰まるのはよくあることです。既存システムから情報を取り出せるかどうかは、必ず最初に確かめてください。
03 動いているかを目で見る
114枚のキャプチャがこれです。AIは「実装しました」と報告してきますが、そのまま信じると事故ります。
実際に見つかった不具合の例です。
スマートフォンで見ると、地図の県名が重なって読めない
カテゴリの絞り込みを2回押すと、件数が合わなくなる
締切が近い制度の赤いバッジが、一部のページだけ出ていない
どれも「動いていない」わけではないので、AIは異常だと気づきません。使う人にとって困るかどうかは、人が見て決めるしかない。ここを省くと、動くけれど使われないものができます。
04 公開してからの判断
作って終わりではありませんでした。公開後にSearch Console(Googleが無料で出している、検索での見え方が分かる道具)で数字を見ています。
ここで実際にやった失敗を書きます。数字を見て、原因を決めつけて、間違えました。
見えていたのはこの2つです。検索結果への表示は直近28日で約7,900回。ところがクリックは2%ほどしかない。ここから「検索結果に出る文章が悪いのだろう」と判断しました。タイトルを書き直せば改善するはずだ、と。
間違いでした。表示を検索順位ごとに分けたら、話が変わりました。
| 検索順位 | 表示回数 | 実際のCTR | この順位の一般的なCTR |
|---|---|---|---|
| 4〜10位 | 315 | 1.6% | 3.4% |
| 11〜20位 | 180 | 3.3% | 1.3% |
| 21〜50位 | 2,192 | 0.2% | 0.4% |
| 51位以下 | 369 | 0.0% | 0.1% |
表示の70%が21位以下でした。検索結果の3ページ目より後ろです。ここはどんなタイトルを書いてもクリックされません。仮に全ページを一般的な水準まで引き上げても、増えるクリックは月に10件ほどでした。
もう1つ分かったことがあります。10位以内なのにクリックがゼロのページが48件ありました。調べると、検索されていた言葉が全部これでした。
「医療機関におけるai技術活用促進事業」 8.8位・クリック0
「四日市市物価高騰対策緊急支援金」 9.4位・クリック0
「地域医療確保に係る緊急・臨時支援事業支援金」 3.7位・クリック0
制度の正式名称そのもので検索する人は、その自治体の公式ページを見に行きます。うちが8位にいても、1位の公式が答えなので選ばれません。この手の検索語57語の実績を合計すると、クリック率は0.00%でした。ここはタイトルを何度書き直しても動きません。
逆に伸びしろが見えたのもこの分析でした。「一覧」「比較」など、調べ物をしている検索語のクリック率が最も高い。ただし表示回数がまだ少ない。ここを増やすのが正解だと分かりました。
この判断はAIには任せられません。そして、数字を見た人間でも間違えます。表示回数とクリック率だけ見て「文章が悪い」と決めつけたのが最初の判断で、順位ごとに分けて初めて本当の原因が見えました。
作るより、公開してから育てる方がずっと長いというのが実感です。しかも、その育て方も一度で当たりません。
かかった費用
金額を書きます。この記事で一番知りたい部分だと思うので、外に払った実額をそのまま出します。
| 費目 | 金額 | 内容 |
|---|---|---|
| 補助金データの利用料 | 0円 | デジタル庁の公開情報。申し込みも不要 |
| サーバー代 | 0円 | この規模なら無料の範囲に収まる |
| 使った部品の代金 | 0円 | Next.jsなど、無料で使えるものだけで組んでいる |
| AIの利用料 | 月額の契約に含まれる | このために追加で払った費用はない |
| ドメイン代 | 0円 | 自社サイトの一部として公開したため |
| 外部への支払い合計 | 0円 | かかったのは人の時間だけ |
ただし、これを「タダで作れる」と読まないでください。外に払っていないだけで、人の時間はかかっています。しかも、その時間を使えたのは弊社が開発会社だからです。
同じものを依頼として受けた場合、弊社なら初期330,000円(税込)からになります。差額は、要件を決める打ち合わせ、動作確認、公開後の調整にかかる人の時間です。費用相場と頼み方はこちらの記事にまとめています。
では、社内でも同じことができるか
ここが本題です。「AIで作れるなら、うちの社員にやらせればいいのでは」と考えるのは自然です。できる場合とできない場合があります。

| こういう業務なら | 判断 | 理由 |
|---|---|---|
| 社内だけで使う。壊れても手作業に戻せる | 社内でやってよい | 失敗の代償が小さい。日報の集計、簡単な集計表など |
| データが1か所にまとまっている | 社内でやってよい | 取り込みで詰まらない。Excelが1つにまとまっている等 |
| お客様が使う。止まると業務が止まる | 外に頼む | 止まったときに直せる人が要る |
| お金の計算が入る | 外に頼む | 間違いが金額に直結する。検算の仕組みが要る |
| 個人情報を扱う | 外に頼む | どこに保存するかの設計が要る。事故ると取り返せない |
| 既存システムとつなぐ必要がある | 外に頼む | 取り出せるかの調査から始まる。ここが一番読めない |
分かれ目は「壊れたときに誰が困るか」です。困るのが自分だけなら社内で作って構いません。お客様やお金や個人情報が絡むなら、外に頼んでください。
今回のサイトは、止まっても弊社が困るだけなので自社でやりました。この基準で選んでいます。
やってみて分かった限界3つ
01 「できました」を信じてはいけない
繰り返しになりますが、これが最大の落とし穴です。AIは自信を持って完了を報告します。画面を見ると崩れている。この差を埋めるのが人の仕事です。
社内でやるなら、「必ず自分の目で全画面を見る」を作業に入れてください。特にスマートフォンでの表示です。パソコンで合っていても崩れます。
02 直しているうちに、別のところが壊れる
1か所を直すと、関係ないページが崩れることがあります。規模が大きくなるほど起きます。1,258ページあると、全部を毎回見るのは現実的ではありません。
対策は「よく使う画面だけを決めておいて、直すたびにそこを見る」ことです。弊社はトップ・地域別・詳細の3種類を毎回確認しています。全部を見ようとすると続きません。
03 作った後の方が長い
公開してからの方が時間がかかっています。データが毎日変わるので更新の仕組みが要る。検索での見え方を直す必要がある。実際、いまも表示に対してクリックが少ない状態を直せていません。
「作れば終わり」で予算を組むと、ここで止まります。作る費用と同じくらい、公開後に手を入れる余力を残しておいてください。
まとめ。AIは道具が速くなっただけ
やってみた結論です。AIで業務システムは作れます。ただし速くなったのは「作る」工程だけでした。
何を作るか決める、データの出どころを探す、動くか目で見る、公開後に育てる。この4つは今も人の仕事で、しかもここが全体の大半です。
だから「AIで作れるので安くなります」という説明には注意してください。安くなるのは一部の工程だけです。弊社が330,000円からという金額を出しているのも、残りの工程が消えないからです。
逆に言えば、壊れても困らない社内の作業なら、いま自社で作れます。日報の集計や、Excelの整理くらいなら試す価値があります。そこで手応えを掴んでから、お客様に関わる部分を相談するのが安全な順番です。
この記事で出した数字は、すべて実際に動いているサイトのものです。みつかる補助金は今も公開していますので、どの程度のものができるのかを見ていただけます。
