朝、いつものようにChatGPTを開いたら画面が真っ白だった。Claudeに切り替えたら、そちらもエラーが返ってくる。2026年8月、実際にそういう日がありました。
この記事の前半では、2026年8月に何が起きたのかを記録として整理します。後半は本題で、AIが止まっても会社の業務が止まらないようにするための備えを書きます。障害は今後もなくなりません。復旧を待つ以外にできることを、AIを日常業務に組み込んでいる実装会社の立場から整理します。
2026年8月、AIは何回止まったのか
まず事実の整理からです。以下は各社の公式ステータスページおよび報道で確認できる範囲の記録です。

Claudeの障害
8月だけで、5日・12日・13日・16日・17日・18日・19日・20日・24日に障害の記録があります。ほぼ隔日のペースです。
| 日付 | 影響範囲 | 復旧までの時間 |
|---|---|---|
| 8月17日 | Claude.ai・管理コンソール・API・Claude Code・Cowork | 約36分 |
| 8月19日 | 複数モデルでエラー(日本時間 01:11〜03:23) | 約2時間12分 |
| 8月24日 | API・Claude Code・Cowork・Workspaces。529 Overloadedエラー | 数時間 |
8月24日に多く出た「529 Overloaded」は、サービス側が処理しきれない状態を示すエラーです。利用者側の設定や回線の問題ではないため、この表示が出たときは手元でできることはありません。
ChatGPTの障害
8月19日から20日にかけて、世界規模の障害が発生しました。数万人がログインできず、過去の会話にもアクセスできない状態になり、Codexや複数のAPIも同時に影響を受けています。復旧までは約1時間でした。
このときの特徴は、障害そのものより関連キーワードの検索が急増したことです。多くの人が同時に「使えない」と検索した。それだけ業務に入り込んでいるということでもあります。
見落としてはいけないのは、同じ日に両方が落ちていること
ここがこの記事で一番伝えたい事実です。8月19日から20日にかけて、ClaudeとChatGPTの両方に障害が起きています。
「片方が落ちたらもう片方を使えばいい」という備え方は、この日には通用しませんでした。2社を使い分けることには意味がありますが、それだけでは足りないという証拠が、実際に8月に出ています。後半の備えは、この前提で書きます。
使えないとき、最初に確認する3つ
いま使えないという状況なら、順番に確認してください。多くの場合、1分で切り分けられます。
01 公式のステータスページを見る
最も確実な一次情報です。障害が起きていれば、ここに掲載されます。
| サービス | 確認先 |
|---|---|
| Claude | status.anthropic.com |
| ChatGPT | status.openai.com |
| Gemini | Google Workspace ステータスダッシュボード |
02 SNSで同じ状況の人がいるか見る
ステータスページの更新には少し時間がかかることがあります。X(旧Twitter)で「ChatGPT 落ちてる」「Claude 障害」と検索して、同じ時間帯の投稿が並んでいれば全体障害です。実務上はここが一番速い。
03 どちらも静かなら、自社側を疑う
公式もSNSも静かなのに自分だけ使えない場合は、手元に原因があります。順に試してください。ブラウザのキャッシュ削除、シークレットモードで開く、ブラウザ拡張機能をオフにする、VPNを切る、別の回線(スマホのテザリング)で試す。この5つでほとんど解決します。
全体障害だった場合、問い合わせても復旧が早まることはありません。待つしかないというのが結論です。だからこそ、待っている間に業務が止まらない形を先に作っておく必要があります。ここからが本題です。
AIが止まっても業務を止めない、4つの備え
大がかりなシステムは要りません。中小企業なら、次の4つで実務上は足ります。

01 業務を「止まると困る」「困らない」に仕分ける
最初にやるのはこれです。備えを考える前に、そもそもどの業務が止まると困るのかを把握していないケースがほとんどです。
基準は単純で、その日のうちに終わらせないといけないかです。
| 区分 | 業務の例 | 止まったときの対応 |
|---|---|---|
| 止まると困る | 当日納品の書類、お客様への返信、締切当日の申請 | 手作業に戻す手順を用意しておく |
| 少し困る | 翌日以降の資料作成、社内向け資料 | 翌日に回す。実害はほぼない |
| 困らない | アイデア出し、調べもの、下書きの推敲 | 復旧を待つ |
この仕分けをすると、多くの会社で「止まると本当に困る業務」は思ったより少ないことがわかります。1つか2つしかないなら、そこだけに備えれば済みます。
02 2社体制にする。ただし万能ではない
ChatGPTとClaude、あるいはGeminiを組み合わせて2社を契約しておく。片方が落ちてももう片方で凌げます。1人あたり月3,000円前後なので、負担も現実的です。
ただし前半で書いたとおり、8月19日から20日には両方が落ちています。2社体制は確率を下げる手であって、ゼロにする手ではありません。ここを誤解したまま「2社入れたから大丈夫」と考えるのが一番危ない状態です。
選び方は、社内の標準環境との相性で決めるのが基本です。Google中心ならGemini、Microsoft中心ならCopilot、文章や開発まで深く使うならClaude、幅広く配るならChatGPT。詳しくは最強AI比較の記事にまとめています。
03 締切から逆算して、当日にAI前提の作業を置かない
これが最も効いて、しかもお金がかからない備えです。
締切当日にAIで資料を作る予定を組むと、その日に障害が起きた瞬間に詰みます。前日までに下書きを作っておけば、当日に落ちても手元にファイルが残っています。
AIを使うと作業が速くなるので、つい締切ぎりぎりに寄せてしまいます。速くなったぶんを、締切を早める方向に使う。これだけで障害の影響をほとんど受けなくなります。
04 出力を溜めておく。会社の資産として残す
うまくいった出力や、よく使う頼み方(プロンプト)を、その都度AIの中だけに置かず、社内のフォルダやドキュメントに残しておきます。
そうすると、障害中でも過去の出力を流用して作業を進められます。定型的な文書ほど効果があり、実際には障害対策というより日常の効率化として効いてきます。
これはシャドーAIの記事で書いた「ノウハウが個人アカウントに消える」問題への対策と同じ動きです。障害対策と情報管理は、実は同じことをやれば両方片づきます。
業務別・止まったときの代替手段
実務でよくある業務について、AIが使えないときにどうするかを整理しました。事前に決めておけば、当日に慌てません。
| 業務 | 止まったときの代替 | 事前にやっておくこと |
|---|---|---|
| メールの下書き | 過去の類似メールを流用 | よく使う文面をテンプレ化 |
| 議事録の整理 | 録音を残し、後日整理 | 録音を必ず取る運用にする |
| 資料作成 | 前回資料の構成を使い回す | 前日までに下書きを作る |
| 問い合わせ対応 | よくある質問の回答集で対応 | 回答集を紙かドキュメントで持つ |
| 翻訳 | 別サービス(翻訳専用ツール) | 代替を1つ決めておく |
表を見て気づくと思いますが、代替手段はどれもAIを使う前にやっていたことです。難しい準備は必要ありません。以前のやり方を捨てずに、手が届くところに置いておくだけです。
システムに組み込んでいる場合は、話が変わる
ここまでは人が画面を開いて使うケースの話でした。AIを自社のシステムに組み込んでいる場合、備え方が変わります。
弊社では、毎朝の数値レポート作成や日々の集計といった業務をAIに組み込んで動かしています。この形だと、障害が起きたときに人が気づかないまま処理が飛ぶ可能性があります。画面を開いて「あ、落ちてる」と気づけないためです。
逆に言えば、ここはシステム側で解決できる領域です。人が気をつけるのではなく、作りで対処できる。どういう作りにすればいいのかを、具体的に4つ挙げます。

01 落ちたら、自動で別のAIに切り替える
最も効果が大きく、作りとしても分かりやすいのがこれです。ChatGPTに送って失敗したら、同じ内容を自動でClaudeに送る。それでも駄目ならGeminiに送る。人は何も操作しません。
これができるのは、どのAIも「文章を送ると文章が返る」という点では同じ形をしているからです。送り先を切り替えるだけなので、実装は大がかりになりません。
8月19日から20日のように2社が同時に落ちる日もあるため、3社目まで用意しておくとほぼ止まりません。契約は使った分だけの支払いなので、待機させている社に固定費はかかりません。
注意点が1つあります。AIごとに出力の癖が違うため、切り替わったときに文章のトーンが変わることがあります。そのまま社外に出る処理では、切り替え後の出力を人が確認する形にしておくのが安全です。
02 失敗した処理を溜めておいて、復旧後に自動で流す
切り替え先も全部落ちている場合の受け皿です。処理を捨てずに順番待ちの列に入れておき、復旧を検知したら自動で順に流します。
これがないと、障害の時間帯に発生したぶんだけデータに穴が空きます。毎朝の集計や日次のレポートのように後追いでも成立する業務なら、この作りだけで実害がゼロになります。
逆に、お客様を待たせる処理(問い合わせへの自動応答など)には向きません。1時間後に返信が届いても意味がないためです。その場合は次の03と組み合わせます。
03 人が引き継げる画面を用意しておく
見落とされがちですが、実務で効きます。AIが使えないときに、人が手動で続きをやれる入口を残しておく作りです。
たとえば書類の下書きをAIが作るシステムなら、AIが止まっているときは前回作った同種の書類を呼び出して、それを直して使えるようにしておく。ゼロから書くよりずっと速く、システムが完全に使えない状態を避けられます。
ポイントは、AIが止まったらシステム全体が使えなくなる作りにしないことです。AIはあくまで機能の1つで、止まっても他の部分は動く。この設計になっているかどうかで、障害日の被害がまったく変わります。
04 落ちたことに、人が気づける仕組み
再試行しても切り替えても駄目だったとき、担当者に通知が飛ぶようにします。メールでもチャットでも構いません。
黙って止まるのが一番困ります。数日経ってから「あの日の分が入っていない」と気づくのが最悪のパターンで、これは通知1本で防げます。
どこまで作るべきか
4つ全部を入れる必要はありません。その業務がどういう性質かで決まります。
| 業務の性質 | 例 | 入れるべき作り |
|---|---|---|
| お客様を待たせる | 問い合わせ対応、申込みの自動処理 | 01と03。速さが命なので切り替えと手動の受け皿 |
| 後追いで成立する | 毎朝の集計、日報のまとめ、レポート作成 | 02と04。溜めて流し、失敗を知らせる |
| 社外に出る文書 | お客様向けの書類、提案書 | 01と03。ただし切替後の出力は人が確認 |
| 社内だけで完結 | 調べもの、下書き、アイデア出し | 特になし。復旧を待てばよい |
費用の話をすると、この4つは開発の最初に入れておけば追加費用はほとんど発生しません。送り先を切り替える処理も、順番待ちの列も、通知も、作りの一部として組み込むだけだからです。
問題は後から足す場合です。すでに動いているシステムに切り替えの仕組みを入れるには、処理の流れ自体を組み直す必要が出てきます。だから見積りの段階で確認するのが最も安く済みます。見積書の読み方や確認すべき項目はAI開発の依頼記事にまとめています。
すでにAIを組み込んだシステムをお使いで、この4つが入っているか分からない場合は、無料のAI業務診断で確認できます。作り直しが必要かどうかも含めてお伝えします。
やってはいけない2つの対応
01 障害を理由にAIの利用をやめる
止まった日に「やっぱり信用できない」と全面的にやめてしまうケースがあります。落ち着いて考えると、これは損な判断です。
8月の障害は多いときで1日に数時間でした。残りの時間は動いています。数時間止まることを理由に、月の大半で得られる効率を捨てるのは、計算が合いません。
02 落ちるたびに別のサービスへ乗り換える
障害のたびに乗り換えると、社内に使い方が定着しません。頼み方の型も、蓄積した出力も、毎回ゼロに戻ります。
どのサービスも障害は起こします。特定の1社だけが不安定なのではなく、大規模なAIサービス全体が抱えている状況です。乗り換えではなく、止まった日の動き方を決めておく方が現実的です。
まとめ。止まる前提で組み立てる
2026年8月の記録が示しているのは、AIは止まるということ、そして複数社が同じ日に止まることもあるという事実です。
やることは4つでした。業務を止まると困るかどうかで仕分ける。2社体制にする。締切を前倒しする。出力を社内に残す。どれも費用はほとんどかかりません。
止まらないAIを探すのではなく、止まっても困らない使い方に変える。これが結論です。
