「AIで業務を自動化したい」と決めたあと、最初にぶつかるのが金額の話です。数十万円という会社もあれば、数百万円という会社もある。同じことを頼んでいるつもりなのに、なぜこんなに開くのか。

先に結論を書きます。AI開発の金額は、作りたい機能の数ではなく、依頼する側の準備で決まります。同じ業務でも、どこまで整理してから持ち込むかで金額は数倍変わる。だから見積りを取る前にやるべきことがあります。

この記事では、中小企業がAI開発を外注する前に知っておくべきことを、実装を請ける側の立場から書きます。費用が決まる仕組み、弊社が実際に見積もっている実額レンジ、見積書で金額より先に見るべき欄、そして相談を受ける中で実際に見てきた失敗する頼み方まで。開発が要らないと判断した案件の話も入れています。

目次
  1. 見積りを取る前に。その業務は本当に「AI開発」が要るのか
    1. 01 既製のツールで足りる業務
    2. 02 設定と使い方で足りる業務
    3. 03 開発でしか埋まらない業務
  2. AI開発の費用は機能の数では決まらない。効くのは4つの変数
    1. 01 画面の数
    2. 02 つなぐ先の数
    3. 03 データの整っていなさ
    4. 04 誰が運用するのか
  3. 中小企業のAI開発、費用の実額レンジ
    1. 330,000円から。1業務・1画面の帯
    2. 100万円前後。既存システムとつなぐ帯
    3. 300万円を超えるとき
    4. 見落とされる月額。作った後にかかるお金
  4. 実際に作ったもの。何にいくらかかるかがわかる4例
    1. 01 児童発達支援の書類作成AI
    2. 02 リユース会社の商品登録
    3. 03 毎朝のレポート作成を人がやめる
    4. 04 作らなかった例。開発を止めた話
  5. 見積書は金額より先に、3つの欄を見る
    1. 01 要件定義がいくらか書いてあるか
    2. 02 保守の範囲がどこまでか
    3. 03 誰が作るのかが書いてあるか
  6. 失敗する頼み方 5パターン
    1. 01 丸投げ
    2. 02 全部入り
    3. 03 相見積りを金額だけで比べる
    4. 04 使う人に見せずに決める
    5. 05 補助金ありきで決める
  7. うまくいく頼み方。依頼前にA4を1枚つくる
    1. 業務の棚卸し。時間×頻度×人数で並べる
    2. やめる業務を1つ決める
    3. コピペで使える依頼シート
  8. AI開発が、普通のシステム開発と違うところ
    1. 100点にならない前提で設計する
    2. 人が最後に見る導線を必ず作る
    3. 使いながら精度が上がる作りにする
  9. 依頼先の選び方。3タイプの違い
  10. 発注から納品までの流れと、支払いのタイミング
  11. 弊社の料金と、相談の進め方
  12. まとめ。金額を下げるのは、値切りではなく準備
  13. よくある質問
  14. あわせて読みたい

見積りを取る前に。その業務は本当に「AI開発」が要るのか

AI開発の相談をいただいたとき、弊社が最初にやるのは見積りではありません。その業務が、そもそも開発しなくても解決するのではないかを確かめることです。

開発会社がこれを言うのは商売として不利に見えるかもしれませんが、理由があります。開発しなくていいものを開発すると、必ず使われなくなるからです。作った側にとっても、使われないシステムほど後味の悪いものはありません。

業務は大きく3つに分かれます。既製のツールで足りるもの、既に持っているものの設定と使い方で足りるもの、開発でしか埋まらないもの。この仕分けを先にやるだけで、費用は大きく変わります。

AI開発が必要かを判断する3つの分かれ道。既製ツールで足りる、設定と使い方で足りる、開発でしか埋まらない

01 既製のツールで足りる業務

会計、勤怠、名刺管理、日報。この手の「どの会社にも同じ形で存在する業務」は、既製のサービスがすでに完成度高く存在します。ここを独自開発するのは、ほぼ確実に損です。月額数千円で買えるものに、数百万円を払うことになります。

判断の目安は「その業務のやり方が、自社独自かどうか」です。他社と同じやり方でいいなら、既製品を探すのが先。開発会社に相談する前に、まず「この業務のSaaSはあるか」を調べてください。あれば、それが最安の答えです。

02 設定と使い方で足りる業務

文章の下書き、要約、翻訳、議事録の整理、メールの返信案。この領域は、ChatGPTやClaudeなどの生成AIを月額数千円で契約し、社内で頼み方を揃えるだけで解決します。開発は不要です。

この帯で必要なのは開発費ではなく、社内の型づくりです。誰がどの業務でどう使うかを決め、うまくいった頼み方を共有し、入力してはいけない情報の線引きをする。弊社ではこの部分を月額顧問プラン(33,000円〜・税込)として提供していて、開発を伴わない支援だけで終わる会社も実際にあります。

03 開発でしか埋まらない業務

逆に、開発しないと絶対に埋まらない領域があります。共通しているのは次の3つのどれかです。

1つ目は自社にしかないルールが業務の中心にある場合。商品の値付け、業界特有の書類の書式、独自の在庫の数え方。既製品はここに合わせてくれません。

2つ目はすでに入れているシステムとつなぐ必要がある場合。基幹システムや業界専用システムを使っていて、その手前や後ろに残った手作業を消したいというケースです。これは既製のAIツールでは届きません。

3つ目は同じ作業が毎日発生し、人数と時間が積み上がっている場合。1回5分でも、5人が毎日やれば月に何十時間にもなります。この帯は投資回収の計算が立ちやすく、開発の効果が最も出ます。

選択肢向いている業務費用の目安始まるまでの時間
既製のSaaS会計・勤怠・名刺管理など他社と同じやり方でよい業務月額数千円〜即日〜数日
生成AIの設定と運用下書き・要約・議事録・返信案など文章まわり月額数千円+社内の型づくり1〜2週間
開発自社独自のルール・既存システム連携・毎日繰り返す定型処理初期330,000円〜(弊社の場合)1〜3ヶ月

相談の入口で「うちは3のどれかに当たるのか」がわからない場合は、無料のAI業務診断で仕分けだけ受けてください。開発が不要という結論になることも普通にあります。

AI開発の費用は機能の数では決まらない。効くのは4つの変数

見積書を見て「なぜこの金額になるのか」がわからないという声をよく聞きます。開発会社の側から言うと、金額を動かしているのは主に4つです。この4つを知っていると、見積りを取る前に自分で金額を下げられます。

AI開発の費用を決める4つの変数。画面の数、つなぐ先の数、データの整い方、誰が運用するか

01 画面の数

金額に最も素直に効くのがこれです。人が触る画面は、1枚ごとに設計・実装・調整が発生します。一覧、登録、編集、詳細、設定、管理者用。数え始めるとすぐ増えます。

逆に言えば、画面を減らすのが最も確実な減額方法です。弊社が実際にやるのは「最初は1画面で作り、使ってから足す」という進め方です。使ってみると、要ると思っていた画面の半分は不要だったとわかります。

02 つなぐ先の数

既存システムとの連携は、見た目の地味さに対して工数が大きく動きます。連携先が公式にAPIを用意していれば比較的読めますが、用意していない場合は画面操作を自動化する形になり、相手側の画面変更で止まるリスクも背負います。

見積り前に確認してほしいのは、つなぎたいシステムにAPIやCSVの入出力があるかです。CSVで出し入れできるだけでも、金額はかなり違います。これは依頼側が調べれば済む話で、調べてから相談するだけで見積りの精度が上がります。

03 データの整っていなさ

見積り時点では見えにくく、始まってから効いてくるのがこれです。同じ会社が「株式会社◯◯」と「(株)◯◯」で登録されている。担当者ごとにExcelの列が違う。型番の書き方が人によって揺れている。

AIは揺れたデータをそれなりに扱えますが、それなりで済ませると精度が落ちます。実務では、開発そのものより既存データの整理に時間がかかる案件が珍しくありません。ここは依頼側でしか判断できない部分(どちらが正しい表記か)を多く含むので、社内で先に手を付けられると強いです。

04 誰が運用するのか

納品後に誰が面倒を見るかで、作り方が変わります。社内にわかる人がいれば、設定を触れる形にして初期費用を抑えられる。いなければ、触らなくても回る作りにする必要があり、その分だけ設計が厚くなります。

中小企業では後者がほとんどです。ここを曖昧にしたまま安い見積りを取ると、納品後に「触れる人がいない」という形で必ず跳ね返ります。

変数金額への効き方依頼側が事前にできること
画面の数最も素直に比例する最初の1画面だけに絞る
つなぐ先の数1件増えるごとに階段状に増えるAPI・CSV入出力の有無を調べておく
データの整っていなさ見積り後に膨らむ最大要因表記ゆれ・重複を社内で整理する
運用する人作りの前提そのものが変わる担当者を1人決めておく

中小企業のAI開発、費用の実額レンジ

ここからは実額の話です。以下は弊社が実際に見積もる際の帯であり、他社の相場調査ではありません。会社によって考え方は違うので、あくまで「実装会社の1社が、どういう基準で金額を出しているか」として読んでください。

中小企業のAI開発の費用レンジ早見表。30万円台から、100万円前後、300万円以上の3つの帯
できること期間の目安向いている会社
330,000円〜1業務・1画面。決まった入力から決まった出力を作る1ヶ月前後まず1つ試したい会社
100万円前後既存システムと1〜2本つなぐ。複数人が同時に使う1.5〜2ヶ月手作業が部署単位で発生している会社
300万円以上業務の流れ全体を載せ替える。権限管理や履歴も持つ3ヶ月以上基幹業務そのものを変える会社

330,000円から。1業務・1画面の帯

弊社のシステム開発は初期330,000円(税込)からです。この帯でできるのは「決まった入力を渡すと、決まった出力が返る」形の1業務です。文章や記録を入れると書類の下書きができる、写真を入れると商品情報の下書きができる、といった単機能。

この帯を弊社がすすめるのは、AIは使ってみないと効くかどうかがわからないからです。最初から大きく作ると、効かなかったときの損失が大きい。1業務で効くとわかってから広げる方が、結果的に安く済みます。

100万円前後。既存システムとつなぐ帯

すでに使っている業務システムや販売管理システムとつなぐと、この帯に入ります。人が転記していた部分を消す、出力したCSVを自動で取り込む、複数人が同時に使えるようにログインと権限を付ける、といった要素が入ってきます。

実務で最も費用対効果が出やすいのがこの帯です。理由は単純で、転記や再入力は「誰の付加価値にもなっていない作業」だからです。消しても失うものがありません。

300万円を超えるとき

業務の流れそのものを載せ替える場合です。複数部署が同じシステムを使い、承認の段階があり、誰がいつ何を変えたかの履歴を残す。ここまで来ると、AIの部分は全体の一部でしかなく、大半は業務システムとしての作り込みになります。

この帯を最初から狙うのは、中小企業ではおすすめしません。いきなりここに行った会社の失敗は、金額ではなく現場が使わないという形で表れます。小さく作って使われることを確認してから広げる方が、同じ予算でも成功率が違います。

見落とされる月額。作った後にかかるお金

初期費用ばかりが比較されますが、実際には作った後にもお金がかかります。中小企業の予算計画で抜けやすいのは次の3つです。

1つ目はサーバー代。動かし続ける限りかかります。規模によりますが、小さいものなら月数千円の帯から始まります。

2つ目はAIの利用料。処理する量に比例します。毎日大量に処理するなら、この費目は無視できません。見積り段階で「月にどれくらいの件数を処理する想定か」を伝えると、開発会社側で概算を出せます。

3つ目は保守。不具合の修正、AIモデルの入れ替え対応、業務変更に伴う調整です。ここを契約に入れないまま納品を受けると、半年後に「直したいが頼む先がない」という状態になります。

弊社の場合は、開発後の継続支援を月額顧問プラン(33,000円〜・税込)で受けています。開発と運用を分けて見積もるより、実務では合算で判断した方が現実的です。

実際に作ったもの。何にいくらかかるかがわかる4例

一般論だけでは判断できないと思うので、弊社が実際に手を動かした例を挙げます。金額そのものは案件ごとの契約内容があるため帯で示しますが、どこに手間がかかるかは実際のとおりに書きます。

01 児童発達支援の書類作成AI

三重県の児童発達支援事業所であるTURNING POINT様向けに開発した、書類作成を補助するシステムです。福祉の現場は支援記録や個別支援計画など書類の量が多く、支援そのものより書類に時間が取られるという課題が構造的にあります。

この案件で効いたのは、既存の業務支援システムを置き換えなかったことです。事業所はすでにシステムを導入していて、それ自体はうまく回っている。埋まっていなかったのは、システムに入れる前の下書きを人が一から書いている部分でした。そこだけをAIで埋めた形です。

弊社の実績値として、書類作成にかかる時間は約80%削減しています。工数の大半は画面の作り込みではなく、書類の型を業務に合わせて詰める部分と、個人情報を扱うための構成を固める部分に使いました。福祉分野は扱う情報の性質上、ここを省略できません。

02 リユース会社の商品登録

中古品を扱う会社では、商品1点ごとに寸法・型番・状態・説明文を作ってECサイトに登録します。点数が多く、1点あたりの手間が積み上がる典型的な業務です。

ここでやったのは、写真と型番から商品情報の下書きを作り、既存のECシステムの形式に合わせて出力するところまでの自動化です。費用が動いたのは、AIの部分ではなく出力先の形式に合わせる部分でした。ECシステムごとに項目名も入力規則も違うため、そこを合わせる作業が工数の中心になります。

この案件から言えるのは、AI開発の見積りを比べるときに「AIで何ができるか」だけを見ても意味がないということです。金額の大半は、出口側のシステムに合わせる作業が占めます

03 毎朝のレポート作成を人がやめる

これは弊社自身の業務です。SNS運用の数値を各媒体から集め、日本語のレポートにまとめて毎朝配信する。以前は人が集計していましたが、いまは自動で作られたものが届き、人は判断だけをします。KPIの転記も同様に自動化しています。

この種の「毎日決まった時間に、決まった形で作る」業務は、AI開発の中で最も投資回収が読める領域です。作業時間×日数×人数で効果が単純計算できるため、稟議も通しやすい。最初の1本を選ぶなら、ここから入るのが堅いです。

04 作らなかった例。開発を止めた話

最後は、開発しなかった例です。「AIで◯◯を自動化したい」というご相談を受け、業務を聞いていくうちに、その業務の発生件数が月に数件しかないとわかったことがあります。1件あたり30分かかっていても、月に数件なら数時間です。

この場合、開発費を回収するのに何年もかかります。弊社からお伝えしたのは「これは既存のツールの使い方を変えるだけで足ります」ということでした。件数の少ない業務は、どれだけ面倒でも開発の対象になりにくい。ここは相談前に自分で計算できる部分です。

目安として、月の合計作業時間が10時間を超えていない業務は、開発ではなく運用改善から入ることをおすすめします。

見積書は金額より先に、3つの欄を見る

複数社から見積りを取ったとき、合計金額を比べても判断できません。金額の差は、たいてい書かれていない部分から生まれているからです。次の3つの欄を先に見てください。

01 要件定義がいくらか書いてあるか

要件定義は「何を作るかを決める工程」です。ここが見積書に項目として立っているかを見てください。立っていない見積書は、要件定義をやらないか、開発費に紛れ込ませているかのどちらかです。

やらない場合、認識のずれが納品時に噴き出します。紛れ込ませている場合は、後から追加費用という形で出てきます。金額が明示されている見積書の方が、結果的に安く終わるのが実務の感覚です。

02 保守の範囲がどこまでか

「保守 月額◯円」とだけ書かれている見積書は要注意です。確認すべきは金額ではなく範囲です。不具合の修正は含むか。仕様変更の依頼は含むか。AIモデルが新しくなったときの対応は含むか。連携先の仕様が変わったときはどうなるか。

AIを使ったシステムは、外部サービスの変更に影響を受けます。この点は普通のシステムより保守の重要度が高い部分です。

03 誰が作るのかが書いてあるか

提案してくる担当者と、実際に手を動かす人が違うことがあります。それ自体は普通のことですが、間に何社挟まっているかは確認する価値があります。挟まるほど金額は上がり、修正の速度は落ちます。

中小企業の案件では、修正の速さが満足度を決めます。「ここを直したい」と言ってから1週間かかるか、その日のうちに直るか。この差は体制で決まります。

見る欄確認すること危ないサイン
要件定義独立した項目として金額が入っているか項目自体がない
保守不具合・仕様変更・AI更新対応のどこまでか範囲の記載がなく金額だけ
体制実際に手を動かすのは誰か・何社挟むか担当者と開発者の関係が説明されない
納品物ソースコードやアカウントを自社で持てるか納品物の記載がない
支払い条件着手金と検収後の割合全額前払い

失敗する頼み方 5パターン

相談を受ける中で実際に見てきた、うまくいかない依頼の形です。金額を払っているのに使われないシステムができあがるのは、だいたいこの5つのどれかから始まります。

AI開発で失敗する頼み方5パターン。丸投げ、全部入り、金額だけの相見積り、現場に見せない、補助金ありき

01 丸投げ

「AIでいい感じに自動化してください」という依頼です。開発会社は業務の中身を知らないので、この状態から作ると必ず外します。

必要なのは技術の知識ではありません。どの業務の、どの部分が、どれくらい面倒かを言葉にすることだけです。それは社内の人にしかできません。開発会社に丸投げできるのは作り方であって、何を作るかではありません。

02 全部入り

「どうせ作るなら」と要望を足していく形です。予算が膨らむだけならまだしも、本当の問題は納品までの期間が延びることです。

期間が延びると、その間に業務が変わります。半年かけて作ったものが、完成時点で現場の実態と合っていない。これは実際によく起きます。1ヶ月で1つ動かす方が、半年で10個作るより成功率が高いのは、この理由です。

03 相見積りを金額だけで比べる

相見積りは取るべきです。ただし比べるべきは合計金額ではなく、前章の3つの欄です。

安い見積りが安い理由は、たいてい範囲が狭いことです。要件定義がない、保守がない、データ整理は依頼側でやる前提になっている。これらは消えたのではなく、後からこちら側の仕事として戻ってきます。

比べるときは、各社に同じ条件を渡してください。同じ1枚の依頼シートを全社に配るだけで、見積りの比較可能性は大きく上がります。シートの作り方は次章に置きました。

04 使う人に見せずに決める

経営層と開発会社だけで仕様を決め、完成してから現場に渡すパターンです。現場からすると、ある日突然「明日からこれを使ってください」と言われることになります。

この形は、機能が正しくても使われません。人は、自分が関わっていないものを積極的に使わないからです。開発の途中で1回でいいので、実際に使う人に触ってもらう場を入れてください。そこで出る「この項目要らない」という一言が、最も価値のあるフィードバックです。

05 補助金ありきで決める

補助金を前提に規模を決めると、金額が制度の上限に引っ張られます。必要なものより大きいものを作ることになり、使われない機能が増えます。

もう1つ、制度上の注意があります。補助金は申請すれば必ず採択されるものではなく、受給を保証できるものではありません。採択されなかった場合に自己資金で進められるかを先に決めておく必要があります。また、補助対象になる費目は制度ごとに決まっており、要件定義や既存データの整理といった費目が対象外になることもあります。

順番としては、先に必要なものを決め、その後で使える制度があるか調べる。この順番が逆になると、たいていうまくいきません。

うまくいく頼み方。依頼前にA4を1枚つくる

逆に、うまくいく会社に共通しているのは、相談の時点で業務が言語化されていることです。技術のことは何も書かれていなくて構いません。必要なのは次の3つです。

業務の棚卸し。時間×頻度×人数で並べる

まず、面倒だと感じている業務を思いつくまま書き出し、それぞれに「1回あたりの時間」「月の回数」「関わる人数」を入れます。掛け算して、月あたりの合計時間を出す。

この時点で、体感と数字がずれていることに気づくはずです。一番イライラする業務と、一番時間を食っている業務は、たいてい別です。開発すべきは後者です。

やめる業務を1つ決める

次に、合計時間の上位から1つだけ選びます。複数選ばないことが重要です。1つに絞ると、開発会社は具体的な提案ができ、金額も期間も読めるようになります。

選ぶ基準は、時間が長いことに加えて「その作業が誰の付加価値にもなっていない」ことです。転記、再入力、集計、コピー貼り付け。この4つが入っている業務は、消しても何も失いません。

コピペで使える依頼シート

以下をそのままメールに貼って、相談先へ送ってください。これが埋まっていれば、どの開発会社でも精度の高い見積りが出せます。複数社に同じものを渡せば、比較もできます。

【AI開発の相談シート】

1. 対象の業務
   ・業務名:
   ・いま誰がやっているか:
   ・1回あたりの時間:      分
   ・月の回数:            回
   ・関わる人数:          人
   ・月の合計時間:        時間

2. いまのやり方
   ・使っているツール(Excel・業務システム名など):
   ・作業の流れ(3〜5行で):
   ・面倒だと感じている箇所:

3. つなぎたいシステム
   ・システム名:
   ・API/CSV入出力の有無:(あり・なし・不明)

4. 望む状態
   ・どうなったら成功か(1行で):
   ・人が最後に確認する工程は必要か:(必要・不要)

5. 前提
   ・想定予算:
   ・使いたい時期:
   ・社内で運用する担当者:(いる・いない)
   ・扱う情報に個人情報が含まれるか:(含む・含まない)

特に効くのが「1行で書く成功の定義」です。ここが書けない業務は、まだ開発する段階に来ていません。

AI開発が、普通のシステム開発と違うところ

依頼する側が最も誤解しやすいのがこの部分です。従来のシステム開発の感覚のままAI開発を発注すると、期待と成果物がずれます。

100点にならない前提で設計する

従来のシステムは、仕様どおりに動けば100点です。AIは違います。同じ入力でも出力が揺れ、まれにもっともらしい誤りを出します。これは性質であって、不具合ではありません。

だから設計の考え方が変わります。100点を目指すのではなく、80点の下書きを高速に出し、人が20点分を直す形にする。書類作成の時間が大きく減るのは、ゼロから書く作業がなくなるからです。この前提を共有できていない発注は、納品後に必ずもめます。

人が最後に見る導線を必ず作る

上の性質から、外に出るもの(お客様に届く文書、金額、契約に関わる内容)は、人が確認してから出る作りにします。確認を挟んでも、ゼロから作るより圧倒的に速い。

逆に言えば、確認を挟まずに全自動で外に出す設計を提案してくる会社には、その理由を必ず聞いてください。社内で完結する処理なら問題ありませんが、外に出るものは別です。

使いながら精度が上がる作りにする

人が直した内容を記録しておくと、どこをよく直しているかがわかります。そこを次の調整に反映すれば、使うほど直す量が減っていきます。

この「修正の履歴を残す」仕組みは、最初に入れておかないと後から足すのが面倒です。見積り段階で入っているかを確認する価値があります。納品時点の精度より、半年後の精度を決めるのはこの部分です。

依頼先の選び方。3タイプの違い

依頼先は大きく3つに分かれます。どれが正解ということはなく、金額と規模の相性です。

タイプ強み注意点相性のよい規模
大手の開発会社・SIer体制が厚く、大規模でも破綻しない小規模案件は単価が合わない。決裁と工程が重い数千万円規模
中小の受託開発会社金額と速度のバランス。窓口と開発が近い会社ごとに得意領域の差が大きい数十万〜数百万円
フリーランス最も安い。話が速い体調・稼働の変動を受ける。保守の継続性に不安が残る単発・小規模

中小企業が最初の1本を作るなら、金額の帯としては中小の受託開発会社が合うことが多いです。ただし1点、見落とされやすい判断軸があります。その会社が、自社の業務でAIを実際に使っているかです。

AI開発を提供していても、自社の業務では使っていない会社があります。使っている会社は、どこで効いてどこで効かないかを体で知っているので、要らないものを止めてくれます。相談の場で「御社は社内で何に使っていますか」と聞いてみてください。答えの具体性で、だいたいわかります。

発注から納品までの流れと、支払いのタイミング

初めて開発を発注する場合、何がいつ起きるかが見えないと不安だと思います。弊社の場合の標準的な流れです。

AI開発の発注から納品までの流れ。診断、要件定義、開発、現場テスト、納品と運用
段階やること依頼側の負担期間の目安
01 業務診断業務の棚卸しと仕分け。開発が不要なら不要と伝えるオンライン30分即日〜1週間
02 要件定義何を作るかを文書で確定。画面と処理を決める打ち合わせ2〜3回1〜2週間
03 開発実装。途中で動くものを見せる確認と回答3週間〜
04 現場テスト実際に使う人が触る。ここで直す現場の時間を確保1〜2週間
05 納品・運用本番開始。使いながら調整担当者1名継続

支払いは着手時と検収後に分けるのが一般的です。全額前払いを求められた場合は、理由を確認してください。

この流れの中で、依頼側が最も時間を使うのは02の要件定義と04の現場テストです。ここに社内の時間を確保できるかどうかが、成否をかなり左右します。逆に03の開発期間中は、依頼側の負担はほとんどありません。

弊社の料金と、相談の進め方

参考として、株式会社TAGIRUの料金を載せておきます。いずれも税込です。

サービス料金内容
AI業務診断無料オンライン30分。業務の棚卸しと仕分け(NDA締結後)
システム開発初期330,000円〜業務に合わせた開発。1業務・1画面から
月額顧問プラン33,000円〜/月業務効率化・AI集客・AIO継続改善を含む継続支援
AI研修個別見積り社内の使い方の型づくり・ルール整備

弊社はAI導入支援の実績が50社を超え、システム開発・SNS運用・Web制作を同じ社内で行っています。導入先は北海道と沖縄を除く45都道府県にわたります。

最初の相談で開発の話をする必要はありません。「この業務、開発する価値があるか」を判断するところから受けています。診断の結果、開発ではなく既製ツールや運用改善をおすすめすることも実際にあります。

まとめ。金額を下げるのは、値切りではなく準備

AI開発の費用は、相手の提示額を値切ることでは大きく下がりません。下がるのは、依頼側の準備で範囲が明確になったときです。

やることは3つだけです。業務を時間×頻度×人数で並べる。上位から1つだけ選ぶ。依頼シートに落として複数社へ同じものを渡す。これだけで、見積りの精度も比較可能性も変わります。

そして最初の1本は小さく作ること。1業務・1画面で試し、効くと確認してから広げる。中小企業がAI開発で成果を出しているのは、ほぼこの順番を守った会社です。

よくある質問

中小企業がAI開発を依頼すると、費用はいくらくらいかかりますか
弊社の場合、1業務・1画面の開発で初期330,000円(税込)からです。既存システムと連携する規模で100万円前後、業務の流れ全体を載せ替える規模で300万円以上が目安になります。加えて、サーバー代・AIの利用料・保守費が月額で発生します。
見積り金額が会社によって大きく違うのはなぜですか
範囲の違いによるものがほとんどです。要件定義が含まれているか、保守がどこまでか、既存データの整理を依頼側と開発側のどちらがやる前提かで金額は変わります。合計金額ではなく、要件定義・保守の範囲・体制の3つを比べてください。
依頼する前に、社内で何を準備すればいいですか
対象業務の1回あたりの時間、月の回数、関わる人数を書き出し、月の合計時間を出してください。そのうえで最も時間を使っている業務を1つだけ選びます。技術的な知識は不要です。この整理があるだけで見積りの精度が上がり、複数社の比較もできるようになります。
AI開発と普通のシステム開発は何が違いますか
出力が毎回同じにならない点です。AIは同じ入力でも結果が揺れ、まれにもっともらしい誤りを出します。そのため100点を目指す設計ではなく、下書きを高速に作り人が最終確認する設計にします。この前提を共有せずに発注すると、納品時に期待とずれます。
開発しない方がよい業務はありますか
あります。発生件数が少ない業務です。1回30分かかっても月に数件なら合計は数時間で、開発費の回収に何年もかかります。目安として月の合計作業時間が10時間を超えていない業務は、開発ではなく既製ツールや運用改善から入ることをおすすめします。
納品後の保守費用はどれくらい見ておくべきですか
金額より範囲を確認してください。不具合の修正、仕様変更の依頼、AIモデルが新しくなったときの対応、連携先の仕様変更への対応がどこまで含まれるかです。弊社では開発後の継続支援を月額顧問プラン(33,000円〜・税込)で受けています。
補助金を使ってAI開発をすることはできますか
制度によっては対象になりますが、申請すれば必ず採択されるものではなく、受給を保証できるものではありません。また要件定義や既存データの整理など、対象外になる費目もあります。採択されなかった場合に自己資金で進めるかを先に決め、補助金ありきで規模を決めないことをおすすめします。
まず何から相談すればいいですか
無料のAI業務診断(オンライン30分・NDA締結後)をご利用ください。業務の棚卸しと、既製ツール・運用改善・開発のどれに当たるかの仕分けをお渡しします。開発が不要という結論になる場合も、その旨をお伝えしています。

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